キャリアプロのホームページを作成するということで、ついでながら私のページも作ってもらいました。毎月は無理でも四季折々ぐらいは、日々考えていること、感じたことを投稿できるのではないかと思っているうちに、もう秋風が吹く頃となってしまいました。まあでも、遅ればせでも夏から始めるのが、夏生まれの私としては「私らしいかな」と思いながら、「夏のたより」から作成することとします。お読みになったかたは、ご感想、ご意見等、お寄せいただければ幸いです。

 

「マナーは変わる」

私が研修講師を始めた平成の最初の頃、「女性講師」というと「マナーの先生でしょ」と返されることが多かった。現在の担当分野は「管理職向け」が多く、受講者は男性が大半だが、最初の数年間は、接遇マナー、資格試験の短期レッスン、労働環境調査の報告書作成など、依頼があれば原則何でもやった。現在でも、毎年4月・5月の新人研修の最盛期には、キラキラと目を輝かせる新社会人を相手に「ビジネスマナー」にみっちり取り組まなくてはならない。

それにしても、「マナー」は難しいと思う。「人間関係の最低限」「能力発揮の前提条件」とうたい、「相手に不快感を与えないルール」ということでは一貫しているが、実はマナースキル(行動に表すマナールール)は刻々と移り変わる。よい例が「名刺交換のマナー」。今春の新人研修では、「同時交換」を中心に実習したが、つい数年前までは「新人の分際で”同時交換”なんて教えなくて結構」という理由で、まず自分から名刺1枚を渡す「丁寧なパターン」だけを教えていた。さらにさらに「上席確認」にいたっては「何でもあり」の状況だ。これも数年前のこと。ある上場企業で本社採用の新人、200人余りを一度に研修したいという依頼で、マナー講師4人を集めた。4クラス同時並行で進めるが、研修内容はできるだけ同じテイストで、という条件。事前に講師の打ち合わせ会を行ったが、基本的なお辞儀のしかたから、名刺交換のしかたから、講師それぞれの正解が微妙に違う。特に「エレベータの上席Q&A」では、召集した講師それぞれに4種類の答えが出てきたのには驚いた。みんな可笑しいやら困ったやらだったが、お互い譲らずで散々紛糾した思い出がある。結局、「お客様が安全で案内者が守りやすい位置を」の原則に、多少の条件をつけて全員に納得してもらった。
人間対人間のことなので、絶対「こうでなければ」のルールは存在しない。そこにあるのは「相手に不快感・不信感を与えないかどうか」の基準でしかないのだが、教える立場としては、新人を安心させるためにも「これでなら、どんな場面でも7割~8割はOK」の内容を示さなければならない。せめて「なぜそうするのか?」を考えて「選択肢は一つではない」ことを判断できるような問いかけや事例を示していきたいと思っている。