今年は秋が早く、紅葉も見事でした。オフィスの窓からは(新潟市の中心部にある)白山公園から芸文会館、信濃川に至る絶景のロケーションが見渡せるのですが、今秋、道路を隔てた向かい側に11階建てのマンションが建ち、緑地帯と紅葉の一部がちょっぴり切り取られてしまいました。最初は違和感があったマンションですが、徐々に風景に溶け込んでいって、今では、先日入居された部屋の明かりが暖かそうに輝いています。そう言えばと、オフィスを移転した数年前よりも、空が随分狭くなっているのに気が付きました。こうやって一年一年が過ぎていくのかなあと、季節柄か年柄か、もの思いに耽っています。
「マナーは変わるⅡ ~女王様の晩餐会~」
前回の「マナーは変わる」について、様々な感想・ご意見をいただいた。「(ほとんどの場合)正解は一つではない」と書いたが、テレビの「マナーQ&A」などの影響か、学生や新人はすぐ「正解はどれですか?」と目をキラキラさせて聞いてくる。そう簡単ではないという事例に、例えば「女王様の晩餐会」のケースを取り上げる。ある国で国賓級のゲストを招き、女王様が晩餐会を催した。そのゲストがテーブルマナーに詳しくなく、テーブルに並べられた”フィンガーボウル”の使い道がわからない。あせったゲストは喉が渇き、手近のボウルの水を飲んでしまった。女王様以下、同席した人たちはみな、マナーを知らないゲストに恥をかかせてはいけないと、ゲストに続いて”フィンガーボウル”の水をいっせいに飲んだ、という有名なエピソードだ。さて、ここからが問題。これは「相手に不快感・居心地の悪さを与えない」というマナーの基本原則に則ったものだが、果たして皆さんは、どうお考えだろうか。
「その場はよいけれど、ゲストが『やっぱりこれが正解だった』と思い込めば、別の場所で恥をかく」とする人が最近多い。じゃあ、どうやって伝えるか?「『このように使うのですよ』と、その人だけに聞こえるようにソッと教える」「『教える』ということ自体が上目線なので、黙って行動で示す」と、様々な答えが寄せられる。「黙って行動で示す」とする人が新潟で多いのは、奥ゆかしい地域性か。ドンピシャの正解はないので、その場の状況や相手に合わせて探ってほしい。大切なのは、「もっとよい方法はないか」と考え工夫することだと思う。「だから、マナーは面倒臭い」と言われそうだが、要は、正解をいくつ知っているかではなく、分からなかったら「これ、何に使うんですか?」と周りに聞いてみる素直さや、「私どもでは、このように使っているのですが…」とさりげなく答える謙虚さや、例え失敗しても「ああ、そうなんですか。私、飲んでしまいました。失礼しました。」と笑って周囲を和ませる、おうようさを持てることが、マナーを人間関係の潤滑油として活用する一番の心得ではないかと思う。